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「オオカミの護符」上映会が開催されました

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【ご近助コンシェルジュ 初山・菅生・水沢地区担当/まゆみ、2020年12月7日記】

 11/3、文化の日。多摩区東生田のトカイナカヴィレッジ松本傳左衛門農園にて「オオカミの護符」上映会が開催されました。
 川崎の北部に広がる都会の中の大自然「生田緑地」。この緑地に隣接する『トカイナカヴィレッジ 松本傳左衛門農園』は350年続く農家・松本穣(ゆたか)さんの私有地です。先祖から受け継いできた土地を『地域の方に開放したい』という松本村長の思いから生まれたこの場所には、春夏秋冬の農体験を楽しみに、幼児から大学生、年配の方まで、多くの方が訪れます。
 私もとってもお世話になっているこの“トカイナカ”で、これまた尊敬する宮前区土橋在住の小倉美惠子さんが作られた「オオカミの護符」上映会を開催する。そして「そのチラシを作ってくれないか?」とデザインの依頼を受けたので、もうこれは当日も参加しない訳にはいかない!と思いました。


「オオカミの護符」をご存知でしょうか?

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「オオカミの護符 ~里びとと山びとのあわいに~」は、今から12年前、2008年、土橋を拠点に活動する「ささらプロダクション」によって作られたドキュメンタリー映画です。(※写真は書籍化で発行された単行本)時代の変化と共に、小さな村から住宅街へ変貌を遂げた川崎市宮前区土橋。長年この地で農業を営んできた小倉美惠子さんの実家の古い土蔵の扉に貼られていた一枚の護符から物語は始まります。
 護符に描かれているのは百姓の神様とされる「オイヌさま」、ニホンオオカミです。毎年、両親の手によって張り替えられるそのお札は一体どこからやってくるのか?そんな疑問が小倉さんを突き動かしました。
 オオカミの護符を発行しているのは、東京都青梅市の御嶽山(みたけさん)。御嶽山は関東平野の山岳信仰の聖地で、宮前区周辺には今も多くの「御嶽講」が残ります。


「講」が教えてくれるもの

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 宮前区の土橋や馬絹に残る御嶽講は、山岳信仰が盛んだった江戸時代にさかのぼります。「講」を結んで、地縁の方々が参拝する習わしがあり、講単位でお祭りなどを行うほか、各家庭からお金を集めて凶作などで経済的に困った家があれば講からお金を貸すという、相互扶助の仕組みもあります。御嶽山には「御師(おし)」という神職の家系があり、それぞれの宿坊ごとに講がつき、講と御師は家族のように支え合いながら暮らしてきました。講ごとに参拝や神楽を奉納し、御師からは護符をいただき、地元に持ち帰る。御師は山に坐す神様と里びとをつなぐ役割を果たしてきました。
 現代には保険や共済がありますが、「講」はそれに通じるお金やものを融通しあう仕組みです。インターネットもテレビもない、科学の進歩もない時代に、「祈り」そして身近な人との「結束」が果たしてきたものは大きい。村落共同体というコミュニティの中で助け合うことが一般的な時代においては、同じ地域に暮らすことは、今とは異なるご近所さんとの関係性、親密度と価値観が存在したのではないかと察します。


土地と人の関係

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 松本村長も小倉さんも思いは一緒。代々受け継いできた土地を、地域の方と何か共有できるものにできないか?そんなことを考えていらっしゃいます。「オオカミの護符」上映会は川崎市内だけでなく様々な場所で開催されていますが、この場所で、近隣に住まう方々に映画を観てもらい、意見を交わす。それがとっても意味のあることだと思いました。

 ささらプロダクションの最近の取り組みの一つに『Home Town Note』があります。昔の生活を知る人たちが高齢化していくことが避けられない中で、『「地域の記憶」をアーカイブする』という課題を掲げ作られたサイトです。
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『Home Town Note』 https://www.hometownnote.com
構想5年、制作2年。ささらプロダクションは映画制作や著作活動を通じて出会ってきた仲間とそれぞれが持つ知恵と技術を結集し、念願のウェブサイトをオープンさせました(2020年5月)。今年8月に一般公開を予定していましたが、この度の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ここに広く呼びかけることに致しました。
 今、私たちが体験していることを残すことが後世の人たちへの助けにもなると考えたからです。
 これまで撮影や取材を通じ各地を訪れる中で目にし、耳にしてきたのは、風土に根ざした暮らしが急激に失われていく様であり、「地域の記憶」を残したいと願う地元の方々の姿でした。そうした状況を踏まえ、日本および世界各地からの投稿が集積し、交わる場が必要だと考え、Home Town Noteを作ることにしたのです。
(ささらプロダクションからのご案内より)
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 個人の思い出や記憶の集積が、文化とか歴史と呼ぶような文脈になる。ご自身の何気ない、普通のことが、もしかしたら大事なことかもしれません。


12年の変化

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「オオカミの護符」の映画が配給されたのは2008年。当初、映画は獣としてのオオカミにフォーカスされることが多かったと言います。それが12年の歳月を経て、「人々の関心がオオカミの護符に象徴される「講」の仕組みや「人や風土との付き合い方」などに移ってきた。」とこの映画の監督をされた由井英さんはおっしゃいました。2008年から2020年の間を振り返ってみても、東日本大震災や熊本地震を含む大地震、豪雨、台風、土砂災害、そしてコロナと、災害のない年などありません。自分の暮らす場所をいかに快適にするか。どうしたら安心して暮らせるのか?多くの人が、以前よりも能動的に模索するようになった、そしてアクションを起こすようになったのではないか?と振り返りました。
 映画で取材に応じてくださった高齢の方々は他界され、貴重な昔の話はもう訊くことは困難になっています。しかし、12年前に小倉さんと由井さんがこの映画を製作してくださっていたことで、今、ここに生きる私たちが自身の心のあり方を見直す機会をいただけているのではないかと思います。


 参加者の皆さんが小倉さんや由井さんの話しに聞き入っている様子、「自分の場所をどう心地よいものにするか」と真剣に向き合っている姿、同じように考えている人が、近くに沢山いらっしゃること、とてもいいなぁと思いながら、私もお手伝いさせていただきました。
 首都圏にありながら、幸いにも農地が多く残る川崎北部。足元に目を向けて、小さな街の歴史や文化をみんなで見つけ、繋げていけたらいいのではないでしょうか。



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