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★有馬ふるさと公園冒険遊び場~ポレポレ~取材記
有馬ふるさと公園冒険遊び場~ポレポレ~取材記
【ご近助コンシェルジュ 有馬・東有馬地区担当/山口正孝、2021年5月31日 記】
有馬・東有馬地区担当の山口正孝です。
令和3年度も、コンシェルジュとして皆さんにたくさんの情報をお届けできたらと思います。引き続きよろしくお願いします。
今年度最初のレポートは、2021年5月15日(土)に開催された有馬ふるさと公園での「冒険遊び場」の取材記です。
新緑が眩しい季節。当日は木立の間から太陽の日差しが輝くとても良いお天気に恵まれました。公園入口には「もっと、外遊び。冒険遊び場」ののぼり旗が立ち、ハンモックや、ターザンロープ、工作道具など・・・公園がまるでトムソーヤ気分に!子どもたちの好奇心をたくさん引き出してくれる遊び場に変身していました。
運営は、ボランティア活動団体「子どもの遊び場を考える会ポレポレ」です。ポレポレとはスワヒリ語で 「ゆっくりゆっくり」「ぼちぼち行こう」という意味をもつそう。「ポレポレ」の活動に長年携わられてきた山岡洋子さんが運営に来られていたので「冒険遊び場」の立ち上げから苦労されてきた道のり、これからの抱負までさまざまなお話を伺いました。
【写真:冒険遊び場ののぼり】
冒険遊び場って?
◆冒険遊び場って?
(以下、山岡さんからのお話)
「冒険遊び場」は、イギリスが発祥でモットーは「自分の責任で自由に遊ぶ」なんです。日本では1979年世田谷の羽根木公園で「羽根木プレーパーク」として誕生したのが始まりで別名「プレーパーク」とも呼ばれています。「冒険遊び場」には「プレーリーダー」という「冒険遊び場」に常駐する大人、遊びの指導役がいることが基本スタイルになっています。
宮前区では2011年から宮前区役所地域みまもり支援センター地域ケア推進課が担当で「冒険遊び場」活動支援事業(公園を利用して、子どもが育つ場・人がつながる場とする)がスタートし現在区内では6ヶ所があります。
①有馬ふるさと公園冒険遊び場:ポレポレ
②宮崎第1公園冒険遊び場:ひこうきぐも
③土橋1丁目公園冒険遊び場:つちはしプレーパーク
④小台公園冒険遊び場:ぴよぴよ
⑤宮崎第4公園冒険遊び場:らいよん公園プレーパーク
⑥野川第3公園:野川第3公園プレーパーク
その中でも一番歴史が古いのがここ有馬ふるさと公園の「冒険遊び場」です。1989年に「有馬ふるさと公園プレーパーク」として立ち上がり、これが「宮前区子どもの遊び場を考える会~ポレポレ会~」の活動の場となり、区の活動支援事業のスタートに関わり、広めるきっかけづくりを担ってきました。
◆毎月第3土曜日の午後開催。現在は12:00-16:00での時短。
現在は、毎月第3土曜日の午後に活動しています(現在は12:00-16:00での時短開催)。申し込み不要で、年齢問わず誰でも参加できます。
「ポレポレつうしん」というプレーパークの内容や告知の広報チラシを作成し、西有馬小学校の児童に配布していたのですが(3、4月は単月、それ以外の月は2ヶ月に1度に発行)、現在はコロナ禍により配布を中止しています。
コロナ禍が続く中でプレーパークに来て欲しい気持ちと、密になってはいけないという気持ちが交錯していて、広報もどこまでやればよいか葛藤しています。
去年の緊急事態宣言中は、メンバー内でも話し合って、リスクを押してまで開催というのも無理があったので中止にしていました。
宣言が明けてからは、公園に様子を見にいってみようという感じであまり広報も大きくせず、facebookでお知らせするレベルにとどめて開催を再開しました。去年の秋頃は少し落ち着いた時期があって10、11月は通常通りに開催、再び緊急事態宣言でまた中止の繰り返し。今は時短という形で開催しています。
遊具はハンモックやターザンロープ、工具などでの遊びが中心。3月はドリームキャッチャーという木に毛糸を巻きつけて作る飾りみたいな遊びも実施したところ意外と男の子も女の子も楽しかったみたいです。
最近の子どもたちは手作業すること自体が少なくなってきていると思うので、手を動かしながらなんとなく皆で話をしていく空間や時間ができたのが良かったです。
◆有馬ふるさと公園プレーパークFacebook
【写真:「ポレポレ」の活動に長年携わられてきた山岡洋子さん】
自分でやりたいことを見つけ、自分の責任で自由に遊ぶ!
私たちとしては、「冒険遊び場」のポリシー「自分の責任で自由に遊ぶ」に沿ってすすめています。この言葉は固くて解釈も色々あるところなんですが。
怪我とか心配することも当然ついてまわりますが、自分のやりたいことを自分で選んでやることが大切で、本当にやりたいと思ったことにはものすごく頑張れたり、失敗しても次はどうすれば良いんだろうとか考えたりする姿を見てきました。自分で選んだことに対して力を発揮する、それが子どもの成長にもなりますね。
失敗や少しの怪我も経験することが子どもの権利だと思いますが、怪我などのリスクを全て排除しないと遊べない環境が多くなりつつある中で、本当に子どもが育っていくときにセットで必要になるものを全てそぎ落とさない場所として考えています。
コロナ前は関係各所に許可を得ながら、焚き火をして一つの鍋でカレーを作って食べるような企画もしていました。今は、オール電化のご家庭などガスの火さえ見ないことも多く、生の火を見ないお子さんもいるんです。火をながめている子どもたちの哲学的な表情というか…様子が変っていくのがわかるんです。メラメラと燃えている火や、下火のチリチリの火まで、ここまでやると熱いとか自分がくべるもので様子が変わってくるのがわかります。火遊びなので、火おこし体験などは消防署へ連絡してやってきました。
調理するカレーも「うちの子、普段はこんなに食べないんです」という声があがり、「外でみんなと食べるから美味しい」と思ってくれる子どももいますね。あと、そうめんやオープンサンドウィッチもやっていました。親がいないときにホイップやチョコクリームをひたすらなめてる子もいたり(笑)、普段できない体験なのかなと。楽しいですよね。
今は食べ物系ができないのがとても残念です。
また、親子連れで来たとしても、親子というカプセルの中で終始せずに、知らない人と人間関係を築いていったり、人と話しているのを聞いてみたり、子ども同士も楽しく工夫しながら遊んでいたりするのを見ると、意外と子どもってこうなんだって気づくこともたくさんあります。自分がこうさせなきゃいけないと思っていることじゃない素の子どもの有り様が垣間見える時もあるんです。それが親にも良いことなんじゃないかって思えて。子ども自身も思いっきり遊んだ経験や人とのつながりって成長過程のどこかで活きていくのではないかとも思っています。
【写真:ターザンロープ】
活動のかかわりは20年前頃から。一難去ってまた一難。作り上げた現在の形
◆活動のかかわりは20年前頃から。一難去ってまた一難。作り上げた現在の形
私が活動に携わり始めたのは20年ほど前。当時子どもたちを連れてお手伝いできることあったらやりますぐらいの気持ちで入りました。しかし、その時は、会は解散も考えられていて一年ほど経過した時に、実はみんな会を辞められてしまい、私が辞めたら会が無くなるのかと思うと、辞められなくなってしまったんです。
このような活動は終わりがないですよね。「ここまでやったからこうなった」という「こうなった」みたいなことがなかなかないんです。
当時から有馬ふるさと公園では、助成金や賛助会員からの会費を集めプレーリーダーを雇って使い切ろうという考えがありました。残ったプレーリーダーと私とで、何年か活動を継続しました。一番活動していた時期(プレーリーダーがずっといる間)は、月に6、7回やっていました。
プレーリーダーは仕事もあって、7回はなかなか難しく、助成金など色々いただきながら人件費に充てたりもしましたが、やっぱり続けられなくなってプレーリーダーが卒業した時にそこから一緒に関わってくれるようになったメンバーと話をして、場を完全に無くしてしまうとまた再開するのも難しくなるから、プレーリーダーは置かずにとにかく自分たちでできる範囲で続けようということになりました。
今は1ヶ月に1回ですが、子どもにとって1ケ月後とか、かなり遠い感覚ですよね。「また明日ね」とかせめて「また来週ね」って言えるようにしたいっていう思いはあります。
◆支援事業のスタートでの地域の広がり。行政とのパイプ。
そんな中、宮前区区民会議で提案されて2011年宮前区の支援事業がスタートしました。この支援事業の担当は宮前区役所地域みまもり支援センター地域ケア推進課の方々です。事業は、各遊び場にというよりは宮前区に「冒険遊び場」を増やしていこう、関わる人を増やしていこう、遊びに来る人を増やそうといった公園利用の1つが事業の目的で、次世代育成の場として公園を考えるところからきています。
事業としては秋口にシンポジウムしたり、色々なところに「冒険遊び場」を出張する、リーフレットなど広報物を作ることを主にしています。
月に1回会議をし、その会議場所の提供や、区役所、宮前区役所道路公園センターのご担当者に出席していただいています。
「ポレポレの私達が責任もってやります」と同センターの方へもお伝えすることで、地域に広報をちゃんとしていくこと自体責任があることに気づきます。
◆活動を維持するには人員や資金の課題もあるが、ほど良いゆるさも。
今では区内に6ヶ所にプレーパークがあり、最初がここ有馬ふるさと公園です。
区の支援事業が出来たことで増えていったような感じで、土橋や野川はそれぞれの地域でボランティアの方が、公園の利活用でプレーパークを立ち上げた経緯があります。
高津区にある「川崎市子ども夢パーク」よりも、ここは先に開いているんです。夢パークができる前に市の職員、横浜市の職員の方も見学に来られたんですよ。横浜は、遊び場の人件費も出る仕組みになっているそうです。
ボランティアではどうしても限界は出てきます。会費も賛助会員の方にいただいていますが活動経費での充当がメインで人件費まで賄えない課題があります。そこをどのようにクリアしていけるか。ボランティアだから出来るというところもありますが。
有馬ふるさと公園では、仲間のパパさんが手伝ってくれています。プレーリーダーがいないからこそ自分達で何ができるか考える良さもあります。
きちんとした時間で始まるわけでもなく、ゆっくり準備しているというのも、色々なことをしっかりやるという方向ですと、主催者側とお客さんという形になりがちじゃないですか。この場所ではできるだけ子どもたちから「ハンモックつけて」って言ってきたからつけようというスタンスで、子どもが出来ることを手伝う、やってみたいということに対して「一緒に作っていく」ことをとても大事にしたいと思っています。参加された方に対しても「何かやりましょうか」というお声がけをいただけば、遠慮なく「お願いします」と言います。できるだけ、交流できるように子ども大人関係なく、どの世代のかかわりでも、自分で決めていくことは大事です。それをちゃんと経験、実体験できる場所にしていきたいです。
【写真:ハンモック】
世代を超えて活動を継続!~それぞれの良さを見つけ頻度も増やせたら~
将来的な抱負やこの先のビジョンとして目指すべきところは、このまま世代交代して継続していきたい、そこが一番大きいです。かかわる人が変わったりしても、それぞれが、良さを見つけてもらって大事にしてもらうこと、できることを見つけて関わってくれると一番いいと思います。
道具などは、賛助会費などで買っています。以前、出産で戻ってきたら、公園内に物置が建っていました。公園に設置していいのかなというのが正直ありましたが、支援要綱ができたことで、支援していく雰囲気ができてきたのか、町会長や同センターの方に手続き書類を出せば認められることを教えていただいて、とてもよかったです。公園の近くに住んでいる方が不安にならないよう手続きすればできることが広がったことも大きいです。
月に7回ぐらい開催していた時期に常連だった子が、その後お父さんになって子どもをつれて千葉のほうから会いに来てくれたり、密ならではのコミュニケーションやネットワークがありました。現在の月1回ではなかなか難しいところはあります。居場所がうまく見つからない子は、ここに来れば誰かがいるとか、しかも絶対行かないといけないわけでもなく、ゆるい感じの場にもっとなればいいなと思います。
今は他の遊び場も、かちっとしたものではなく、どの世代でもふらっと行けて自分を語らなくてもなんとなくここで話ができるような場として活用して欲しいです。
昨年は3日連続でサマープレーパークを開催しました。ブルーシートをひいて、水かけやったり、滑り台やったり。初めて来た子はすぐには参加しない。それはいいと思っています。怖いとか大丈夫かは自分でわかるようになるからです。親御さんはせっかく連れてきたからやらせようとするけれど、子どもは周りの様子を見ながら自分で考えるんです。結果、そういう子たちも2日目になるとやってみようと準備してきたり、去年は参加しなかったけど、今年は参加した…そんな例はたくさんあります。子どもの世界って、やってみようかな、どうかな、痛かった、どうかな?やめようかな?違う形で挑戦しようかな?などなどを繰り返しています。
長い目で見る、何もやらない子でも、見てはいます。あの時あれだけ見ていたことは残りますし、ただ見るという体験も大事です。ただ見るだけで絶対終わっていません。色々なことが心の中で起きている、継続性がある日常の場だから、起こることで、ご家族がどこかに連れて体験するスペシャルイベントとはまた違うのではないかなとも思います。
最後に、昨年度は中止になってしまいましたが、一昨年開催されたふれあいフェスティバルin有馬に町内会の方から地域の団体としてお声かけをいただきました。
以下の記事にも掲載されていますが、「冒険の森」コーナーでハンモック、モンキーブリッジ、ベーゴマ、中国ゴマ(ディアボロ)などをセッティングし、子どもたちに普段できない遊びを楽しんでもらいました。
◆「ふれあいフェスティバル in 有馬」 を開催して(有馬町会 会長 伊藤昇)
町内会とのつながりも出来ていますし、こうした活動を継続すること、頻度も多くできるようになること、そしてもっと関わる人も増えたらいいなと思います。
◆編集後記
今回、山岡さんはプレーパーク開催中にもかかわらず長時間に渡り、想いを熱く語ってくださいました。とてもバイタリティのある方で、「冒険遊び場」の活動を通じて子どもたちに成長の過程の中で教えたいこと、学んで欲しいことの目的がとてもよく伝わってきました。
子どもたちは、「冒険遊び場」を通じで、2つの「じりつ」を学んでいると感じました。1つは「自立」です。モットーにあったように「自分の責任で遊ぶこと」。他の力に頼らないで、自分のことは自分でするということで、まさに「自立」です。プレーパークがスタートしたばかりの時間帯は、何をしていいかわからない子ども達もいるそうですが、周りを見ながら徐々に溶け込んでいき、終わりの時間には自分で色々なところを選択し、全ての遊具で遊んでいるそうです。またターザンロープやハンモックなど最初は恐怖心があり躊躇したりする子もいますが、勇気を出し自分で決心してチャレンジしています。その瞬間も成長を垣間見ることができました。
もう1つは「自律」です。集まってくる子ども達は、お互い初めてという子も当然います。その中でのコミュニケーションが形成され、協調性が生まれてくるのです。徐々に子どもの人数が増えていくと、遊具も順番待ちになりますが、お兄さん、お姉さんが下の子をリードしてあげて、子ども同士でコントロールしていることがうかがえます。「自律」は大人になるにつれて社会でいろんな人と関わっていくために、とても大切な力と言えます。自然とそのような力も備えられるものと感じました。
山岡さんをはじめ、長年にわたりこのような活動を継続していただけているスタッフの皆様のご尽力に感謝いたします。できることをやるという範囲で今後も無理なく、活動を継続していただければ幸いです。今回はうちの小学4年生の娘と友達も参加させていただきましたが、初めから終わりまで精一杯遊び、楽しませていただきました。
ありがとうございました。
【写真:ロープで木登り】